園芸療法どんなことをするの?園芸療法士というお仕事

園芸療法 その他

人間は、植物から様々な恩恵を授かっており、その恩恵の中には、植物からの「癒しの力」というものがあります。

緊張した場面や根詰めて仕事などをしている最中、ふと植物の緑をみると「ホッ」とリラックスしたり、落ち込んだ時に美しい花や植物の香りに触れると少しやる気や元気が出てきたという経験はないでしょうか?

園芸療法とは、このような植物や自然とふれあうことで心身の改善と安定が得られる「癒しの力」を利用した健康法の一つといえます。

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医薬品や医療的な機械類などは使用しません。

身近な草花や野菜などの園芸植物や観葉植物で身の回りの自然とのかかわりを通して、病気や障害、高齢化に伴う体力低下など支援が必要な方の心身の向上を促し、興味や意欲を引き出して機能の維持や回復、向上生活の質の向上させることを目的としています。

園芸療法の歴史

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植物や自然とふれあうと心身の回復や安定が得られるという原理は、古代エジプトの医者が心身を患った者に庭園散策をすすめていたといわれ、古くから活用されていました。

現在の園芸療法の起源はアメリカで、庭いじりをしていた精神病患者の方の症状が軽減することを発見したことがきっかけと言われています。

1950年代ごろアメリカでは、第2次世界大戦終了後、心身に深く傷をおった傷痍軍人の社会復帰を目指し発展し、大きな効果をあげました。

その後、日本でも1990年ごろからアメリカやヨーロッパで行われている「園芸療 法」が本格的に紹介されるようになり今日に至ります。

園芸療法による心身へのメリット

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農業と違い園芸自体、自分のペースでムリなく継続的に行え心身の健康を向上させるメリットがあります。広大な場所や特別な農機具がなくても行うことができます。

人は何かを始めるためには動機付けが必要ですが、園芸はハードルが低くそれが容易です。用具など若干の出費は必要ですが、特別高額なものは必要ありません。

収穫を楽しみたい、自然を感じたい、皆で作業すると楽しい、植物を育てるのが好き、などの楽しさや喜びを簡単に引き出すことができます。

園芸療法の心身へのメリットは、

  • リラックス、気分転換ができて不安や緊張、抑うつ状態を和らげる
  • 四季や自然を感じることで、視覚・触覚・嗅覚・聴覚・味覚の五感を刺激する
  • 体を動かすことで心地よい疲労感と適度な体力づくりができる
  • 好奇心や達成感を味わうことができる
  • 自信を得ることが出来れば、次への意欲がわいてくる。
  • 愛情が芽生え、積極的に世話をする、生きがいになる。
  • 世話が必要なので外出の機会が増え活動性が向上する
  • 近隣の方とコミュニケーションをとる機会が増える
  • 栽培した野菜を調理すれば経済的

等があげられます。

また、園芸療法を認知症患者さんへ取り入れてみたところ認知機能、興奮、前向きな感情、エンゲージメント(愛着心や思い入れ)に対する有効性に有意な差が認められたとの報告もあります。Journal of Clinical Nursing誌オンライン版2020年2月4日号より

園芸療法、具体的にどんなことをするの?

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多くはデイサービスなど介護施設や障害を持たれた方の福祉施設などで心身機能維持・回復を目的として実践されているようです。

園芸には、楽しみながら心身を刺激する要素があり健康を増進する要素がたくさんあります。

園芸療法は、作業に参加型と植物を見たり触ったりするの観賞型の2つに分かれるそうです。

作業に参加する場合、園芸療法だからと言って特別な事をしたり、特にこの植物や野菜を育てるといった決まりはないようです。

育てたいもの育て、できることだけ自分でやってもらうというものから、対象者の様子を見ながらその人の症状や変化などによって勧める植物を変えることもあるようです。

鑑賞、作業どちらにしても植物アレルギーなどには十分注意が必要です。

子供たちの「花育」との違いは?

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「食育」という言葉は、ご存じの方も多いのですが「花育」という言葉もあるのをご存じでしょうか?

「花育」は、園芸などを通して子供にやさしさや美しさなどといった感情や情緒を育み、感受性が豊かなることを目的とした情操教育の一つです。

幼児・児童に、やさしさや美しさを感じる情操面の向上、農と接する体験教育の機会を与える。

花卉を介した世代間交流の促進と地域コミュニティの再構築につながる。

四季に応じた花きを楽しむ日本の花き文化の継承が期待される。

全国花育活動推進協議会HPより抜粋

同じ園芸ですが、心身の向上を促す園芸療法とは少し目的が異なります。しかし人の心を豊かにするという意味では同じことですね。

 

「園芸療法士」になるためには

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以前と比べて、園芸療法士の求人は増えてきているようですが、一般的にはまだあまり知られていません。

活躍の場は特別養護老人ホームや高齢者福祉施設や障害者福祉施設などが中心です。

農業や園芸の他にも医療や福祉、心理、教育など様々な分野の知識や技術が必要になりますので、社会福祉士、介護福祉士、看護師、作業療法士などといった資格にプラスして「園芸療法士」という資格を持っていた方が、仕事をする上では有利になるようです。

 

・登録園芸療法士(NPO法人日本園芸療法研修会・NPO法人園芸療法研究会西日本)

・園芸療法士(日本園芸療法学会・全国大学実務教育協会)

正園芸療法士(日本園芸療法士協会)

兵庫県園芸療法士(兵庫県)

 

今後は、リハビリなどの機能回復施設などがある医療機関、教育施設(保育所・幼稚園)、フラワーショップや動植物園、ホームセンター、ガーデニングや農業関連企業などでも活躍できそうです。

園芸療法で季節・自然・生きていることを実感

人間はそもそも自然の中で生活してきた生物なので、自然の中に身を置くことでストレスが軽減し、血圧や心拍数は安定し安心した気持ちになれます。

生計を立てる本格的な農業と違い、園芸療法でおこなう園芸の作業は力仕事はほとんどありませんのでムリなく自分のペースで続けることが出来ます。

植物が成長する姿を楽しみにしながら、季節や自然を感じることで生きていることを実感できるとまた、園芸作業にいそしみたいと思うようになるでしょう。

 

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