胡蝶蘭は、蝶が舞うように咲く花が特徴で、開店などのお祝い事に贈られる花として知られています。
「胡蝶」とは、蝶の古い言い方で、源氏物語の巻名にもなっている言葉です。
胡蝶蘭には「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」という花言葉があることから、縁起が良い花として人気を集めています。
胡蝶蘭はお店や会社で目にすることが多く、花が落ちてしまったら終わりで、自分で育てるイメージはないかもしれません。
でも、その特性を知れば、何年にもわたり咲かせることができる花です。
フラワーギフトや開店祝いなど、せっかくいただいた高価な胡蝶蘭を来年も大切に育ててまた、花を咲かせてみませんか?
ここでは、胡蝶蘭の特徴や育て方をわかりやすく解説していきます。
【胡蝶蘭の育て方】色で異なる胡蝶蘭の「花言葉」
胡蝶蘭には、「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」という共通の花言葉を持っていますが、色ごとにもそれぞれ花言葉を持っています。
白色の胡蝶蘭には、「清純」「純粋」の花言葉があります。
ビジネス、特に「開業祝い」や「結婚式」などお祝いによく贈られますが、お葬式や法事などお悔やみのケースにも使われます。幅広い用途で活躍し、どんな場面にも贈りやすい無難なカラーと言えます。
ピンク・赤色の胡蝶蘭には、「あなたを愛します」という花言葉があり、プロポーズなどの告白や結婚記念日などで贈られる方が多いようです。
2色系(リップ系)の胡蝶蘭には、花言葉はありませんが華やかでおめでたいイメージから開店祝いや移転祝い、昇進祝いなどによく贈られます。
また母の日やお誕生日、結婚祝い、長寿のお祝いにもよく贈られてます。
黄色の胡蝶蘭には、花言葉はありませんが「金」を連想させることから開店祝いや移転祝い、昇進祝い等によく贈られています。
青色の胡蝶蘭には、「尊敬」や「親愛」を意味しています。昇進や就任、新築祝いとして、よく贈られています。
紫色の胡蝶蘭には花言葉はありませんが、紫色自体に「高貴」「優雅」といったイメージがあります。そのため目上の人に送る色として好まれており、目上の方の誕生日や母の日、退職祝いや古希(70歳)や喜寿(77歳)などの長寿祝いなどによく贈られています。
色によっては、近年流通し始めたものもあり、まだ花言葉がないものもあります。
そういった場合は、堅苦しく考えずシーンや贈る人のイメージに合わせて購入されている方が多いようです。
【胡蝶蘭の育て方】胡蝶蘭って、そもそもどんな花?
胡蝶蘭は、台湾.マレーシア、フィリピンなど、東南アジアに自生する植物です。
自然界では、大きな樹木や岩などに根を張り、空気中から水分を取り込む「着生蘭(ちゃくせいらん)」と呼ばれるラン科の植物の一種です。
胡蝶蘭の鉢植えには、土ではなく水苔(みずごけ)やウッドチップが入っていて、自然界と同じように根が着生ができるように工夫されて販売されています。
胡蝶蘭の生産業者は、ビニールハウスで胡蝶蘭を育てます。ビニールハウス内は、温度は20〜29℃、湿度は70〜80%に保たれ、日光もふんだんに取り込まれます。
自宅で育てる場合は胡蝶蘭の特性を理解して、できるだけ自生地の環境に近くなるよう室内やビニールハウスで育てると良いでしょう。
【胡蝶蘭の育て方】胡蝶蘭購入時のポイント
大切な人やお世話になっている人にプレゼントするなら、きれいで丈夫な胡蝶蘭を贈りたいですよね?
毎年花を咲かせてくれるような丈夫な胡蝶蘭を選ぶには、まず「葉」を見ることがポイントです。
胡蝶蘭には、他の着生蘭についている「バルブ」と呼ばれる肥大した茎が元々ありません。
バルブは水分や養分を蓄えるために使われますが、それがない胡蝶蘭は代わりに分厚い大きな葉を持ち、そこに水分や養分を蓄えています。
胡蝶蘭にとっての葉は、他の植物以上に大切な部分で、葉の状態は胡蝶蘭の元気さや丈夫さを示すバロメーターになります。
適切な環境で育てられた胡蝶蘭の葉には、下記のような特徴(ポイント)があります。
・ツヤのある葉
・シワがなく、ハリのある葉
・肉厚で、ぼってりとした質感の葉
・深緑色の葉
花が美しく咲いていても、葉が黄色く変色していたり色ツヤのよくない胡蝶蘭は避けるようにしましょう。
もちろん、花の色や枝ぶりにも豊富なバリエーションがあるので、自分で選ぶときには、好みに合った品種を選ぶとよいでしょう。
贈り物でもらった胡蝶蘭を自宅で育てる時には、花が終わったタイミングで、株を一株ずつ分けて植え替えることによって、管理しやすい小さな鉢植えに仕立てるとよいでしょう。
【胡蝶蘭の育て方】初心者でも簡単なお手入れ方法
胡蝶蘭は高級なフラワーギフトとして流通することから、冷房の効いた部屋でも育つイメージがあるかもしれません。
実際は、胡蝶蘭は東南アジアが原産の花で、涼しすぎる環境は向いていません。胡蝶蘭のお手入れをするときには、蒸し暑い熱帯や亜熱帯の花であることをまず念頭に置いておきましょう。
具体的な方法は下記の通りです。
水やり
5〜9月の成長期には、しっかり水をあげる必要があります。
ただし、根腐れを防ぐために水やりのタイミングは、完全に水苔の表面が乾いてからです。葉をめくり、胡蝶蘭の根元が乾燥していることを確認し、1株につきコップ1杯の水を朝にあげましょう。
朝に水やりをする理由は、室温が高くなってから水をあげると高温により根が腐ってしまう原因になるからです。
冬は、胡蝶蘭がほとんど成長しない時期ですが、暖房で室温管理をする場合には、一年を通して同じように水やりをしてください。
玄関など、暖房のない場所では、胡蝶蘭の株は成長を止めて休んでいる状態になるので、水はあまり必要ありません。
必ず水苔が乾くのを待ってから、あげすぎない程度に水やりをします。
温度・湿度の管理
胡蝶蘭に適する温度は、15度以上30度以下です。
人間が好む室温と一致しますので、人にとって暑すぎず寒すぎないようにエアコンなどを使えば、胡蝶蘭にとっても生育しやすい環境になります。
ただし、亜熱帯、熱帯が原産の胡蝶蘭は、多湿を好むことにも気をつけなくてはいけません。
胡蝶蘭には、人間が不快に感じる60〜80%の湿度が適しています。
部屋全体をこの湿度にしなくても、1日に数回、霧吹きで花、葉、根元に水を吹きかけることで、乾燥を防ぐことができます。
置き場所
胡蝶蘭は自然界では、大木の幹に張り付くように根を張り、自生しています。
大木に守られたような明るすぎない場所が、胡蝶蘭にとっては快適です。
光合成をするための日当たりは必要ですが、直射日光に当たると傷みやすい性質があるのです。
室内のレースのカーテン越しの日当たりが、胡蝶蘭にとっては最適です。また、エアコンの風が直接当たらないように注意しましょう。
一年中気温が安定した熱帯、亜熱帯が原産の胡蝶蘭は、エアコンの風による急激な温度変化で傷みやすくなります。
【胡蝶蘭の育て方】病気や害虫を防ぐには?
胡蝶蘭は出荷まで生産業者のビニールハウスで品質管理をされて育てられます。
温度、湿度だけでなく、適切に薬剤が使用され、病気や虫の被害にあわないための予防がされています。
出荷時の胡蝶蘭は、徹底的に管理された健康な状態なので、その後の4〜5年はあまりトラブルなく育てることができるようです。
しかし、年数が経つにつれ、胡蝶蘭には病気などの被害が起こりやすくなります。
よく見られる病気
胡蝶蘭によく見られる病気は「立ち枯れ病」です。葉や根が病原菌やカビに冒されて枯れてしまう病気です。
有名なものでは、リゾクトニア菌による「リゾクトニア立ち枯れ病」があります。
立ち枯れ病の原因となる菌には他にもさまざまな種類がありますが、葉が急に黄色っぽくなるのが特徴です。
他に、葉に黒い斑点ができる「炭疽病」、葉が濡れたように変色して軟化する「軟腐病」も細菌やカビが原因です。
よく付く害虫
主に室内で育てる胡蝶蘭にも虫がつくことがあります。代表的な害虫は、ハダニです。
ハダニは屋外からいつのまにか現れ、胡蝶蘭についてしまいます。
体長0.5mmととても小さく、その姿を見ることはなかなかできませんが、胡蝶蘭にハダニがつくと葉が白っぽく、ツヤもなくなります。
ハダニは葉の裏から葉の汁を吸いつくすことから吸汁性害虫と呼ばれ、胡蝶蘭が枯れてしまう原因になります。
他にはカイガラムシも胡蝶蘭につく吸汁性害虫として知られています。固い貝殻のような見た目のものと白い綿ぼこりのようなコナカイガラムシと呼ばれる種類があります。
もともと家の中にいる可能性は低いですが、庭木についていたり、他の植物を購入した際に一緒についてきてしまうことがあるようです。
こうした病気や虫による被害から胡蝶蘭を守るには、こまめに胡蝶蘭を観察し、早めに異変がある葉を取り除くことです。
ひとたび病気や虫がつくと株全体が弱り、間に合わないことも多くあります。
予防するには、定期的に薬剤を散布することが必要です。ホームセンターなどで手に入る洋ラン用のスプレータイプの薬剤を選ぶと、希釈することなくそのまま使えて便利です。
散布する時は、必ず頻度や量は表示に従って行いましょう。
胡蝶蘭の近くで、食用にするハーブや野菜を一緒に育てている場合には、薬剤がかからないように注意してください。
【胡蝶蘭の育て方】初心者でも簡単な植え替え
胡蝶蘭の花が一度限りで枯れてしまって、葉だけになっている姿を見たことがある人もいるかもしれません。
じつは胡蝶蘭は少し手間をかけることで、毎年花を咲かせてくれるものなのです。
胡蝶蘭の寿命を延ばす手間とは「植え替え」です。
フラワーギフトの胡蝶蘭は、見映えをよくするために細いポットに詰められている状態です。
花が終わるまではそのままでも大丈夫ですが、自分で育てたい場合には、植え替えをしてみましょう。
胡蝶蘭は、植え替えをすることで、数十年もの間、毎年花を咲かせてくれると言われています。
最初に植え替えをしたら、次からは株の成長に合わせて、3年に1度のペースで植え替えをし、鉢を一回り大きなものに変えていきます。
胡蝶蘭の植え替え手順
- 胡蝶蘭をポットから取り出す
- 新しい水苔を手に取る
- 根の間に水苔を入れる
- 外側の根を水苔で包む
- 鉢に水苔ごと入れる
水苔は、園芸店やホームセンターのほか、オンラインショップでも入手でき、水に浸して絞ってから使います。
水苔には、保水性が高いというメリットがある一方、水やりをしすぎると根腐れにつながることがあります。
根腐れが心配な場合には、水苔ではなく、ラン用のバークと呼ばれるウッドチップや洋ラン用の培養土を選んでもいいでしょう。
最近では、動画配信サイトでも植え替えのやり方を見ることができますので確認してみましょう。
【胡蝶蘭の育て方】胡蝶蘭の花が咲き終わったら?
胡蝶蘭の花が終わると「枯れて寿命が来た」と思う人もいるかもしれません。
胡蝶蘭は花の時期が終わっても、葉や根は生きていますので捨てたりせず、お手入れをしてみましょう。
ギフト用の胡蝶蘭の場合、豪華にするためにいくつかの株を合わせて植えられています。
手間がかかりますが、その株を一つ一つ分けて、水苔にくるみ、一つの鉢に一株ずつ植え替えてみましょう。
詳しくは、前述した植え替え方法を参考にしてください。
もう一度花を楽しみたい時には、花のついていた花茎を根元から3節目で切っておくと、つぼみをつけて花を咲かせてくれることがあります。
2度目の花を期待せず、株を休ませたい時には、花茎を根元からカットしましょう。こうすると花に栄養を使うことなく、光合成で作られた栄養を根や葉に蓄えることができます。
葉の部分も枯れてしまって、回復の見込みがない胡蝶蘭は処分することになります。
その場合、枯れた胡蝶蘭の花、葉、根、水苔もすべて可燃ゴミとして捨てることが可能です。
土を捨てる場合必要には、自治体では回収しておらず、自宅の庭に戻すか、土の販売店などに回収してもらうことになります。原則として土を使用しない胡蝶蘭は、最後の処分に関しても育てやすい花といえるでしょう。
初心者でも簡単な胡蝶蘭の育て方まとめ
華やかで、いかにも高級感のある胡蝶蘭。育てるのが難しい、というイメージがありますが、育て方のコツをつかめば、そんなに大変ではありません。
フラワーギフトで胡蝶蘭をもらったら、ぜひ育ててみてくださいね。
胡蝶蘭をうまく育てるには、放ったらかしにせず、胡蝶蘭の状態に合わせて、お手入れを少しずつ変えていくことが大切です。
水のやり方や置き場所のポイントをおさえ、適切に薬剤を使用することで、何年も元気に花を咲かせてくれるでしょう。
兼業農家の跡取り息子。植物が好き、花が好き、ガンダムも好き。
農業繁忙期には更新がちょくちょく遅れるよ。